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シベリアセンニュウ Japanese Name: Shiberia Sen-nyuu

英名 : Pallas's Grasshopper Warbler
学名 : Locustella certhiola

分類
 シベリアセンニュウは1811年にPallasにより、トランスバイカリア地域東部のOnonとBorzyaの間にはさまれた山岳地帯で採取された個体に基づいて初めて記載された(Mayr and Cottrell 1986, Baker 1997)。本種の亜種レベルでの分類は諸説あるが、近年においてはrubescens, sparsimastriata, centralasiae, そして基亜種certhiolaの4亜種に分類することが多い(Mayr and Cottrell 1986, Svensson 1992, Baker 1997, Clements 2000, Dickinson 2003)。しかし山階(1941)は、上記各亜種のうち、亜種sparsimastriataを認めず、亜種minorを認めて4亜種とした。山階(1941)が認めた亜種minorは、現在基亜種の同物異名(シノニム)とされることが多いが、この説があることは、山階(1941)も既に記述している。

日本国内で記録されている亜種
 日本鳥学会(2000)とKawaji and Abe(1988)によれば、亜種シベリアセンニュウ(L. c. rubscens)が北海道浜頓別町(1985年9月29日)、石川県舳倉島(1987年5月)、鹿児島県国分町(1987年11月15日)に記録されている。Kawaji and Abe(1988)は、本種の亜種として、certhiolacentralasiaeminorrubescensの4亜種を挙げており、上の「分類」中に記述したような亜種minorを基亜種とする説とは別の説にしたがっており、両亜種を別亜種として扱っている。
 また、日本鳥学会(1974)は「日本鳥類目録改訂第5版から除いた種および亜種について」の中で、本種の一亜種であるL. c. minorの北海道礼文島および利尻島での1952年夏の記録を挙げている。この亜種は上記のとおり、現在は基亜種の同物異名とされることが多い。この記録に関し、高野(1981)によると、故中村幸雄氏が、1952年夏に利尻島及び礼文島で観察し、さえずりを聞き、1標本を得たものの、正式の報告が書かれず、標本は失われたとされている。
 バーダー編集部(2006)の中で森岡照明氏が沖縄県与那国町で撮影された本種の写真について、「日本に渡来したとされている亜種rubscens(シベリア北部)より明らかに羽色が淡く、満州、ウスリー、アムール基亜種certhiolaではないかと思われる」としている。しかし、前述のとおり、日本鳥類目録第5版から除かれた種および亜種の中に、亜種L. c. minorの北海道礼文島および利尻島での1952年夏の記録が挙げており、この亜種は現在は基亜種とされることが多いことから、1952年の時点で、既に基亜種が記録されていた可能性がある。また、夏に記録されていることから、この亜種は礼文島および利尻島で繁殖していた可能性もある。

文献
Baker, K. 1997. Warblers of Europe, Asia and North Africa. Christopher Helm, London.
バーダー編集部 2006. 写真集 日本の鳥 2005. 文一総合出版, 東京
Clements J. F. 2000. Birds of the World:A Checklist, 5th edition. Ibis Publishing Company, CA.
Dickinson, C. (ed.) 2003. The Howard and Moore Complete Checklist of the Birds of the World, 3rd edition. Christopher Helm, London.
Kawaji, N. and Abe, J. 1988. Records of Pallas's Grasshopper Warbler Locustella certhiola from Japan. J. Yamashina Inst. Ornith. 20: 107-110.
Mayr, R. & Cottrell, G. W. (eds.) 1986. Check-list of the Birds of the World. Vol.XI. Museum of Comparative Zoology, Cambrirdge.
日本鳥学会 1994. 日本鳥類目録改訂第5版. 学習研究社, 東京.
日本鳥学会 2000. 日本鳥類目録改訂第6版. 日本鳥学会, 帯広.
Svensson, L. 1992. Identification Guide to European Passerines. 4th revised and enlarged edition. Stckholm.
山階芳麿 1941. 日本の鳥類と其生態 第二巻. 岩波書店, 東京.
 

1. 2005年10月10日
沖縄県与那国島
撮影:川那部 恒氏

この写真は、上で挙げたバーダー編集部(2006)に掲載された写真と同一個体の別写真である。胸に縦斑がある。山階(1941)によれば、幼羽はのどの両側、下喉、上喉に斑点とも見える短い黒褐色の縦斑を有するとしており、本個体はこの年生まれの個体と考えられる。
2. 2005年5月25日
石川県輪島市

本個体は、いくつかの文献やサイト上に公表されている写真と比較した結果、各写真資料とほぼ同色またはより暗色に見えることから、亜種L.c.rubescensの可能性が高い。しかし、写真による色彩の比較検討は、実物によるものとは異なり、かなり困難であり、亜種に関しては、明確には判断できない。

2005年5月には、筆者は25日から27日にかけて複数の個体を確認しているが、その中には囀りによってのみ確認したものも含まれているが、本種の囀りはシマセンニュウに非常によく似ているとされており、囀りによる同定は危険である。
3. 2005年5月25日
石川県輪島市

本個体の胸には斑点がみられない。これは春期の換羽後のものと考えられ、胸には幼羽が残っていない。

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