日本鳥学会2009年度大会参加報告

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日本鳥学会2009年度大会会場:北海道大学水産学部(左:9月19-21日)と函館国際ホテル(右:9月22日)


 日本鳥学会の2009年度大会は、2009年9月19日から22日まで以下の日程で、北海道大学水産学部と函館国際ホテルで開催された。

9月19日(土): 各種委員会、評議委員会、自由集会 (北海道大学水産学部)
9月20日(日): 口頭発表、 ポスター発表、自由集会 (北海道大学水産学部)
9月21日(月・祝): 口頭発表、自由集会 (北海道大学水産学部)
9月22日(火・祝): 総会、シンポジウム、懇親会 (函館国際ホテル)

 今回の大会での口頭発表は74件、ポスター発表は91件で、昨年度の東京の立教大学での大会時の発表数とほぼ同数だった。内容は近年の大会の中でも、もっとも充実していたように感じ、興味深い発表が多かった。昨年度の大会では問題点が指摘されたが(昨年度大会報告)、今年の発表では昨年度の学会誌を読んで納得した発表者が多かったのか、より改善されているように感じた。

 ただし、毎回あることだが、口頭発表では、「発表時間は12分以内、質疑応答を含めて15分以内」という決まりが守られない場合があった。発表が12分をオーバーしてしまい、質疑応答ができない発表があり、
「質問したい方は、個別に。」
とされる場合があったが、質疑応答の時間以外で発表者に質問するために発表者をつかまえるのは難しいうえ、発表直後でないと質問事項を忘れてしまうこともある。発表から時間がたつと、聞いた時の集中力がなくなってしまい、質問や意見を述べる気力を失ってしまうこともある。発表時間は守ってほしいと思う。時間がオーバーしているにもかかわらず、臨機応変に発表内容を変えることなく、余計な修飾語をつけたような発表を聞いていると、私はいらいらしてしまう。

1.口頭発表とポスター発表

口頭発表とポスター発表の中で、私が特に興味をいただいたいくつかの発表の概要を紹介する。なお、これは発表要旨とメモに基づき、正確さを心がけてるが、誤りがないとも限らない。正確な情報を得たい場合は要旨を見るか、あるいは可能であれば発表者に問い合わせるようにすればよいと思う。今後発表内容がさらに練られて、印刷物に論文として発表される場合もあるので、それを待つのもよいだろう。

1)口頭発表

・オオセッカ Locustella pryeri の仔殺し
高橋雅雄・上沖正欣・蛯名純一・宮彰男・上田恵介

要旨によると、仔殺しとは、
「同種個体が同種の若齢個体(血縁関係の有無は問わない)を積極的に攻撃・殺害行為であり」
とあり、自分の子供を殺す行為だけではない。私は寡聞にして知らなかったが、一般に
(1)若齢個体を共食いすることで餌資源として利用する。(共食い)
(2)競争相手を殺害することで資源や投資を独占する。(資源独占)
(3)養育中の子を殺すことで配偶相手を得るなど、自らの繁殖機会を増やす。(Sexally Selected Infanticide : SSI)
の3パターンに大きく分けられるそうだ。演者らは2007−2009年の繁殖シーズンに仏沼湿原において繁殖生態調査を実施し、その際に1巣で仔殺しを観察した。これは、巣の父鳥が消失し消息不明となったのちに、近隣のオスがテリトリー拡大を行い、仔殺しをしたもので、仔殺しを行ったオスは被害にあったメスとはつがい形成しなかった。オオセッカはメスがほとんど移動せず、2回目の繁殖を行う。もし、今回の事例でオスが同じ場所で繁殖するならば、被害メスとつがう可能性はある。その場合は上の(3)のSSIに該当すると思う。また、これに対する意見として、他のメスが(加害オスのテリトリーに)入ってくる可能性があるのならば、被害メスとつがいを持たなくても(新たなメスとつがいを形成して繁殖機会が増えるので)SSIになるのではないか、というものもあった(()内は私が追加した)。

・都市騒音がシジュウカラのさえずりに及ぼす影響−オス間競争を考慮した分析
濱尾章二・渡部末緯子・森貴久

近年の都市の騒音環境下では、さえずりの周波数が高くなったり、音圧が高くなっているすることが指摘されている。しかし、たとえば、騒音レベルが低い場所は質の高い生息場所であるためオス間競争が強く、周波数が低くなっているなどという可能性もある(換言すれば、騒音レベルが高い場所はオス間競争が低いので、周波数が高くなる可能性がある)。この研究では、オス間競争の強度を指標するオスの生息密度を測定し、統計的にその影響を除去することにより、騒音のさえずりへの影響を調査した。東京都心の緑地でさえずりに最高周波数、最低周波数など7変数を調べ、統計解析を行った結果、騒音が大きいと最低周波数が高く、さえずり当たりのフレーズ数は多く、そしてさえずりは長くなった。これにオスの密度が高い場合の解析も行い、オスの密度はさえずり構造に影響するが、その効果を取り除いてもさえずり構造に対する騒音の影響があることが示された。

・鳴き声からみたリュウキュウコノハズクの3つのグループ
高木昌興

リュウキュウコノハズクは、南西諸島、蘭嶼、バタンバブヤン諸島に分布し、4亜種に分けられている。この研究では、の22島で収集したリュウキュウコノハズクの声(hooting call)の周波数と時間に関する4成分を用いて、判別分析を行って島ごとの違いを査定し、グループ分けしている。鳴き声の特徴からは、リュウキュウコノハズクは(1)南大東島、(2)沖縄島以北、(3)宮古島以西、の3つのグループに分けられ、宮古島以西のまとまりに沖縄島周辺の小島嶼が含まれた。定性的解析によると、北の島々のものに2syllable、南の島々のものに1syllableのものが多く、2番目のsyllableは小島嶼で複雑化するものが多い。また、定量的解析では、南大東島亜種は明らかに区分されるが、亜種botelensisは亜種elegansの中に含まれており、シノニムかもしれない。

・青森県において観察された尾羽が青灰色のチョウゲンボウの幼鳥
黒尾正樹・長内淳次

巣から落ちて保護されたチョウゲンボウの幼鳥に関する報告。チョウゲンボウの幼鳥の尾羽は、先端部を除くと黒色と赤褐色との顕著な横帯を有するとされるが(森岡ほか 1998、小林 1999)、この幼鳥は先端部は一般的に知られている幼鳥と同様の色彩で、それ以外の部分は青灰色で細い黒色の横帯があった。この個体のほかに別の1羽の同腹ヒナも同様の青灰色の尾羽を有していた。ただし性別は不明である。

・DNAバーコーディングから明らかになった、種内に大きな遺伝的変異をもつ東アジア地域で繁殖する鳥類種について
齋藤武馬・染谷さやか・小林さやか・岩見恭子・浅井芝樹・西海功

DNAバーコーディングとは、DNAの特定領域の塩基配列を解読することにより、簡便な種判別システムを構築することを目指しているもので(DNA分類学ではない)、50ヶ国、170以上の研究機関が進める国際プロジェクトである。これまでの研究によると、北米産鳥類では263種を調べ、通常は種内での遺伝的差異は2%より小さく、種間では2%より多い。ところが、日本周辺の種ではこの原則に当てはまらないものが多く、たとえばロシアと本州のヒバリ(4.9-5.3%)、亜種サンショウクイと亜種リュウキュウサンショウクイ(2.1%)、三宅島とトカラ列島のイイジマムシクイ(4.8%)、亜種シベリアアオジと亜種アオジ(3.5%)などのように種内の遺伝的差異が2%を超えるものがある。一方、シロハラ上種(シロハラ、アカハラ、アカコッコ、マミチャジナイ)やシマセンニュウ上種の姉妹種間では2%以下の際しか認められない分類群がある。この理由として、更新世の氷期が北米では存在するのに対し、東アジアでは欠如しており、古い系統群が絶滅せずに保存されたからかもしれない、と説明された。ただし、発表を聞いたのち、知人との会話しているうちに、同じような分布をするイイジマムシクイとアカコッコ(シロハラ上種に含まれる)の説明がこれではできないのではないか、と問題があることが分かり考えさせられた。また、亜種ヒバリAlauda arvensis japonicaは独立種A. japonicaであるという説もある(極東鳥類研究会 1996 サハリンの鳥類2)。この根拠は、南千島の国後島に亜種ヒバリと亜種カラフトチュウヒバリA. a. lonnbergiの両方が生息していることであり、これから見ると、ロシアと本州のヒバリの遺伝的差異が大きいことも納得できる。

・エゾムシクイ Phylloscopus borealoidesとウスリームシクイ P. tenellipesの識別
茂田良光・齋藤武馬・岡部海都

ウスリームシクイの分類については、本ホームページの別ページに簡単に記しているが、ウスリームシクイの学名であるPhylloscopus tenellipesの和名をエゾムシクイとして長い間扱ってきたため、若干の混乱も起こっているように思う。サハリンの鳥類2(極東鳥類研究会 1996)では、Phylloscopus borealoidesの和名をサハリンムシクイ、Phylloscopus tenellipesの和名をエゾムシクイとしているが、和名だけ見ると、エゾムシクイをウスリームシクイと取り違えてしまう。エゾムシクイは、日本産鳥類目録改訂第6版ではPhylloscopus borealoidesとされており、ウスリームシクイの別種として扱われているが、ウスリームシクイの記載はない。しかし、実際には国内でも本種は記録されている。この発表によると、岡部による1996年5月1日、福岡県宗像郡大島村(元宗像市)大島(北緯33度55分、東経130度26分)において標識放鳥された成鳥が確実な初記録である。また、岡部は2007年5月10日に福岡県福津市渡東郷公園(北緯33度47分、東経130度27分)において撮影と音声の録音より雄1個体を確認している。ウスリームシクイとエゾムシクイの識別はかなり困難であるが、発表者により新たな識別方法が判明した。要旨によると囀りが明らかに異なり(これは文献により従来指摘されている)、さらに色彩が若干異なり、翼を閉じたときの初列風切の突出は、ウスリームシクイでは次列風切と三列風切から5枚から6枚しか突出して見えないのに対してエゾムシクイでは7枚か8枚見える。さらに要旨には書かれていないが、尾羽の模様も若干異なる。中国黒竜江省で捕獲されたウスリームシクイ1個体と北海道・山梨県のエゾムシクイ2個体のミトコンドリアDNAのCO I領域約660bpを比較したところでは、3.4-3.8%の遺伝的差異が認められ、十分に種間レベルの差異があるといえるだろう。エゾムシクイP. borealoidesの原記載について知りたかったので、発表時と懇親会の時に発表者の茂田良光氏にお聞きしたところ、原記載は簡単なもので計測値や色彩が出ている程度のものであるようだ。その後発表されたMartensの論文では主に囀りの相違について記述されているとのことだった。なお、本ホームページの別ページ(ページ1ページ2)にも、この識別について記している。このページには明記していないが、作成後、茂田良光氏にメールで初列風切突出の違いについての情報を、私信でいただいている。ウスリームシクイは日本産鳥類目録に記載されていないが、私の野外観察での経験や今までに得ている情報によると、日本国内を毎年通過している可能性が大きい。おそらく九州北部を春期に通過する個体が多く、その他の地域や秋期に通過する個体も少ないながら存在すると思う。

(以上、2009年9月25日作成)

・亜熱帯性島嶼に近年確立したモズ個体群の生活史
松井 晋

奨励賞受賞講演。沖縄県大東諸島には、1970年代初頭にモズの隔離個体群が形成され、繁殖するようになった。モズは東アジアの温帯で繁殖する種であり、亜熱帯の大東諸島で繁殖するモズは興味深い。この研究では、亜熱帯性島嶼に新しく定着したモズ個体群の生活史形質を解明することを目的としている。また、鳥マラリアや線虫感染症の負荷と、繁殖努力量の関係についても調べている。南大東島のモズの研究のメリットは、
(1)繁殖個体群確立時期が明確であること。
(2)温帯性のものが熱帯性のものに移行していること。
(3)隔離された地域であること。
である。鳥マラリア感染率は、長野県に比較して、南大東島ではかなり高率である。鳥マラリア原虫と線虫の感染強度は、
・繁殖オスでは縄張り内の餌資源量が少なく、巣立ち雛数が多いほど、
・繁殖メスでは平均巣立ち雛体重が重いほど、
増加した。つまり、雌雄ともに繁殖努力量の高い個体ほど、感染症による負荷が大きくなると考えられた(繁殖努力と寄生者に対する抵抗力はトレードオフの関係にある)。また、南大東島に特異な生活特異性が見られている(内容は省略)。亜熱帯性島嶼に近年から定着した南大東島のモズは、感染症が蔓延する環境に未だ適応できていない生活史形質を示しているようにみえる。

・ハチクマが東シナ海周辺を渡るとき、春・秋で異なる移動経路を選択するのは何故か
山口典之・本田裕紀郎・島田泰夫・有澤雄三・樋口広芳

日本国内で繁殖するハチクマは、春と秋では渡りの経路に違いがある。秋には長崎県の五島列島から東シナ海を直接的に横断し、中国の揚子江河口から杭州湾付近に到達するのに対し、春には東シナ海を横断せずに、中国内陸部を北上したのち朝鮮半島を南下し、韓国南端から対馬海峡を渡って九州北部に達する。秋の渡り経路は移動距離が節約されるが洋上を長時間飛翔することは危険かもしれないし、春は陸伝いで安全に見えるが時間とエネルギーの損失が多いかもしれない。ハチクマはなぜ、春と秋にこのような渡り経路の違いを見せるのか?この研究では、気象条件の影響を受けているのではないかと考え、気象庁が提供している「メソ客観解析データ」を利用して、春と秋の移動経路と周辺域における気象条件を抽出した。秋の渡り時は風況は東シナ海・対馬海峡の両海域とも安定して北東風が吹き、ハチクマは風況が良い時を選んでおり、向かい風だとたまってしまう。春の渡り時は風が安定せずに風向が様々であり、ハチクマは風を選べない。このような季節による風況の相違が、春と秋のハチクマの渡り経路の相違に影響しているのではないだろうか。

2)ポスター発表

・九州中央山地における繁殖期のコマドリの分布
関 伸一・坂梨仁彦

コマドリは日本列島・サハリン・南千島で繁殖する夏鳥で、九州は亜種コマドリの分布の南限にあたり、生息地はごくせまい地域に限られ、生息数も多くない。そのために九州の大分・熊本・宮崎では絶滅危惧II類、福岡県では準絶滅危惧種に指定されている。2009年の九州中央山地におけるコマドリの生息状況調査の結果がこの発表である。その結果、さえずりや再生音への反応を全く確認することができなりルートがあった。このルートを含めた全調査ルートでは、1990年まではスズタケ(Sasamorpha borealis)を優占種とする臨床植生が見られたが、今回さえずりが確認できなかった調査ルートでは、スズタケが広範囲にわたって枯死しており、ウグイスや総市長などのスズタケを営巣場所とする種の生息密度も低かった。コマドリの分布の変化の一員として林床植生の変化が影響している可能性がある。コマドリは木の低い一に営巣し、スズタケがなくなると林床が乾燥し、採食環境が悪くなり、そのような理由でコマドリが減少しているのかもしれない。九州中央山地周辺におけるスズタケ枯死には、ニホンジカ(Cervus nippon)の密度増加と採食による影響が関わったとされており、今後はニホンジカによる林床植生変化の影響を受ける可能性の高い集団として、ここのコマドリの継続的な調査が必要である。なお、本州でも同様のことが起こっている可能性はありそうだが、継続的なコマドリの定量調査結果がなく、客観的判断が難しいようである。九州では元々コマドリが少ないため、「いる」か「いない」かで、減少を判断することができた。

・目録編集物語 第1話「編集、はじまる」
柳澤紀夫・池長裕史・川上和人・西海功・平岡孝・山崎剛史・綿貫豊(鳥類目録編集委員会)

日本鳥類目録は、2000年に発行された改訂第6版が現在、最新版である。日本鳥学会では、設立100周年を記念し、2012年に第7版を出版する予定である。この目録の編集のため、昨年、鳥類目録編集委員会が設立された。この目録の作成基準は気になるところであるが、ポスター発表によると、作成にあたっては、以下の方針での編集を検討している。
(1)分類に関する新知見の検討を行い、分類体系を抜本的に見直し。
(2)主要査読誌で国内記録が論文化されている種は、原則掲載。
(3)引用可能な出版物で種の判定が可能な場合は、掲載を検討。
(4)亜種が不明でも、種の判定が可能なものは、原則掲載。
(5)過去50年以内に記録のない種は、記録がある種と分けて、掲載。

2.自由集会

自由集会は2つのものに出席し、大変、勉強になった。ここでは私のメモに基づいて、記述する。

・和文論文をスムーズに掲載する方法
濱尾章二(国立科博・自然教育園)・新妻靖章(名城大学)

この自由集会は、論文に書く中身のことではなく、論文をスムーズに掲載に持っていくための作業の進め方や心構えを考える集会だった。まず、初学者だった立場からの発表があった。論文は第3者に読んでもらうことにより、内容が向上する。書いている本人は研究内容を分かり過ぎているために説明不足になることがあるが、査読によって改善される。また、著者は何度も読み返しているうちに、わかりづらい環境に慣れてしまう、間違いに気づいていない、ということもある。困ったこととして、査読後の修正に慣れておらず、修正が広範囲になってしまい、結局、共著者に注意され指摘部分のみの修正にしたが、投稿の手引をよく読めばよかった。また、査読者の意見に反論してよいのか、悩んだこともあった。査読を乗り越えるには、
・投稿前に手引をよく読む。
・査読結果に悩んだ時には、投稿経験豊富な人にアドバイスをもらう。身近にいないときには論文作成相談室に相談する。
次に、文献として引用可能な「観察記録」とするために書くべきこと、の発表があった。まず、観察記録に何を掲載するか、は投稿の手引にかかれている。観察記録にはフォーマットがあり、観察に当たっては、形態、行動などあらゆる形質について記録を取るように心がけ、記述に当たってはまんべんなく記述する。別観察による記録は、「13.その他」に初認・終認などとして記述する。また、100m-5mなどという記述ではなく、「約100mの地点で発見し、・・・」などと具体的に記述する。
次に、編集者・査読者との正しいやり取りのしかた、の発表があった。投稿するときには、編集幹事に手紙を書くべきであり(カバーレター)、この内容は以下のようなものにする。
・和文誌に投稿する旨を伝え、著者とタイトル、原稿は未発表で同時に他誌への投稿がないことを伝える。
・論文の内容を簡潔にアピールし、和文誌に掲載するに値する原稿であることを説明する。
また、科学論文として体裁は整っているかチェックすること、少なくとも最新の和文誌に印刷されている論文と同じ体裁になっているか確認すること、日本語を正しく書くことができているか、が大切である。編集者の改訂要文・査読コメントに応えるときには、少なくとも日本鳥学会誌では論文の採否の決定は編集幹事に一任されていることから、編集幹事を納得させるべきである。改訂原稿を投稿するときには、また、手紙を添える(指示にしたがい、修正したこと。修正箇所を分かりやすく記述。主要なコメントに対してコメントを受け入れ、修正した内容を説明するか、受け入れていないのであれば、その理由を説明)。
最後に査読の意義や査読のポイントの説明があったが、省略する。

・DNAバーコーディングと島の鳥の種分化・種分類研究
西海功(国立科学博物館)

DNAは種を分ける目安であり、基準ではない。北米の鳥では2%を境に別種と同種を区別できるとされているが、日本では合わない例もある。Mayrの生物学的種概念にしたがえば、種の判別は、同所的集団では比較的容易だが、異所的集団では難しく、同所的に見られる近縁種間との違いと比較して、遺伝学的、形態学的、生態学的、生理学的な同程度の相違があるかどうかを見る。DNAバーコーディングの流れは、標本収集、証拠標本の作成、塩基配列の決定の順となり、これをデータベースに登録し、利用する。島の鳥の種分化・種分類研究の紹介もあり、その中で、オオトラツグミの尾羽は12枚であり、日本本土のトラツグミの尾羽が14枚であることと相違があり、囀りが複雑で本土のものと違うので別種とすべきという主張もあるが、トラツグミの基亜種もオオトラツグミと同様の特徴を持っているので、これはおかしい、という指摘があった。


(以上、2009年10月4日作成)

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